伊藤和雄(広島欠陥住宅研究会代表幹事)
昨年、広島欠陥住宅研究会から調査に出向いた四国の2件が、NPOを主宰・運営している建築士に調査を依頼して新たな被害を受けていました。この建築士たちには、十分な調査を行っていないにもかかわらず訴訟を熱心に勧めるという共通点があり、信頼を失った途端に、ブログで執拗に依頼者を中傷したり不当に高額な代金請求訴訟を起こすなど、欠陥住宅被害に悩む人たちをいっそう苦しめていました。
被害者をねらった事件屋だと思われますが、欠陥住宅裁判の実状をよく知らないまま正義漢を気取っている無責任な建築士たちかも知れません。いずれにしても、NPOに対する世間の信頼の高さとインターネットを利用しているという点で、新しい「落とし穴」として認識すべき問題だと思われます。
そうした事件屋建築士たちに対抗するためにも、全国ネットや地域ネットの広報展開には今まで以上に工夫が必要でしょう。一般から見れば、全国ネットや各地域ネットは被害救済を標榜するNPOとの区別が難しいだけでなく、NPOよりも不確かな存在かも知れないからです。また、私たちも調査のあり方について日頃からしっかり話し合い、留意すべき点をおさえておかないと、事件屋や無責任な正義漢たちと同じになってしまうおそれがあります。
広島欠陥住宅研究会では、調査のあり方・進め方を弁護士・建築士それぞれの立場から見直していただいているところです。その中で「調査先で口に出して言ってはならないことは何か」「無断で部屋に入ったり押入や収納家具を開けたりすることは避けなければならない等、調査中に守るべきマナーにはどのようなものがあるか」「調査中に建物や家具等を汚損した場合には、どう対処するのか」ということについても思案していただいています。ホームページも、被害救済に取り組んでいることやその内容が、よりわかりやすく伝わるよう、改良をこころみています。
調査を請け負う建築士による被害について全国ネットのメーリングリストで報告させていただいた際、一級建築士の木津田秀雄先生から「依頼者との信頼関係が崩れると、我々も同様の状況になる可能性もあります。議論をする必要がある問題だと思います」、小野誠一先生からは「なにを信ずればいいのか、消費者の方からみたら本当にわからなくなってきている状況となっているように感じます。自らを検証することもそうですし、どのように活動を広め、消費者の方々に向かい合っていくべきか、その資質についてはどうなのかなど、検討していかなくてはいけないように思います」というご意見をいただきました。被害者救済のために真摯に調査等の活動を重ねておられる建築士の皆様は、経験の中から、多かれ少なかれ、そうした問題意識をお持ちなのでしょう。一緒に考えていくことができれば、と願っています。