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静岡大会パネルディスカッション報告

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弁護士 吉岡和弘(仙台)


今大会は、耐震偽装事件が発覚した直後とあって、当然のように耐震偽装事件の再発防止と被害救済のあり方がメインテーマになった。パネルディスカッションは二つのテーマにわけ、第1部では『耐震偽装被害の実態と救済のあり方』を、第2部では『耐震偽装問題から何を学ぶか』について議論がなされた。

まず、第1部『耐震偽装被害の実態と救済のあり方』では、被害者のグランドステージ(以下GSという)千歳烏山・森健介氏(耐震偽装対策委員会副委員長)から「ヒユーザー、木村建設、姉歯建築士と、民間確認検査機関イーホームが関与するマンションにつき、銀行、区役所も含め、関与者の誰一人も自分が悪かったという人はいなかった。退去命令が出された後、賃貸住宅暮らしをしている。0 . 34の強度しかないマンションを解体し再築した場合、600万円~2250万円もの新たなローンを組まなければならない。5000万円のローンに加えて新たに2000万円以上のローンを組めと言われても支払えず、困惑するばかりだ」という悲痛な訴えがなされた。

また、GS江川の相談に乗っている武井共夫弁護士からは、「A棟(28戸)とB棟( 4戸)が実質的に別々の構造で、A棟の耐震強度が0 . 57の強度しかなく、建築確認をした川崎市は住宅・建築物耐震改修等事業の適用をもって耐震補強工事を行う方針でいる。『許容応力度等計算』と『限界耐力計算』とで結論が違う点で、住民は少しでも少ない補修費用の負担をとるか、確実な安全性をとるかという相克する気持ちや、資産価値はどうなるのかという不安を抱いている。ヒューザー管財人は20%程度の配当を行う方針である」などとの報告がなされた。

姉歯元建築士の構造計算書を分析した藤島一級建築士(構造専攻)からは、「管理組合は構造計算書を持っていなかった。計算書を見ると1階から最上階まで柱の鉄筋量が同じであったり、耐力が70から55%減らしているなど、直ぐに疑問を抱く内容だった。通常、安全確保のため安全率をかけるのに姉歯物件は危険率をかけたも同然だ。国が何故0 . 5を基準にして建替えの有無を区別するのか理解できない」など、構造専門家ならば容易に計算書のおかしさを発見できたことが強調された。

法的視点から立命館大学・松本克己教授は「国や行政は既存の耐震改修に係る事業制度を活用し支援するとして賠償責任とは無関係という姿勢だが、建築確認をした民間検査機関の落ち度につき行政の責任が問われるだろう。検査員は、日頃、構造計算ミスはあるだろうとの視点で検査業務に携わるのだから、それを見逃したら義務違反となるし予見可能性もある。銀行の責任として、錯誤無効とか担保評価義務懈怠と構成する視点もあり得るかもしれない」との指摘がなされた。

会場の被害者からは「法的にどこまで責任が問えるか詳しく教えてほしい、解体すべき建物なのに銀行ローンが消えないのはおかしい」との指摘や、「イーホームズは本当に検査をしていたのか。再発防止、被害救済に立ち向かうべきだ」、などとの発言が続いた。最後に、私から「全国ネットとして、国・行政・銀行の責任につき法的責任を問う発言が乏しいのではないか。全国ネットとして被害者の方々に、とるべき方向の選択肢を提示すべきではないか」と発言し、第1部を終了した。

休憩後、第2部「耐震偽装問題から何を学ぶのか」のパネルディスカッションに移った。まず、アメリカ・ロス市在住のエンジニアであるトム・亀井氏からは「建築士の倫理の問題だ。アメリカではプロフェショナリズムが尊重される。公共の健康・安全・財産の保護を心がけ勉強し経験も豊富だ。このことは、職種、倫理規定には必ず謳われている。アメリカでは綿密なインスペクションが行われている」などとアメリカの建築生産システムの紹介と建築士の職業倫理を強調する発言がなされた。

かつて我が国の欠陥溶接問題を指摘した経験のある東京・千代田区の加藤哲夫氏からは、「1階と10階が同断面など建築行政に関わる者としてはとんでもないことだ。中間検査の充実を図るべきだ。ロス市の建築安全局を訪問した際、同局長は『市民の安全と財産守るために民間にはやらせない』と言い切った。同感だが、現状の建築行政の現場は人員削減などで困難な状態にある。消防法の現場査察のように行政が抜き打ち的に現場に行くことで緊張感を持つ例もある」などと、行政がおかれている困難な状況の指摘がなされた。

関西の欠陥住宅問題等で中心的に活躍する木津田秀雄一級建築士からは「検査と監理者が同一人なのも問題だ。中間検査をいれることで現場に緊張感が出るが、数パーセントの欠陥被害のために現場にべったり常駐というのはどうか」などとの指摘がなされた。

本大会のゲストスピーカーとしてご参加頂いた元東京都職員の鈴木繁康氏からは、「建築行政に対する業者からの圧力や行政トップ等からの圧力がある。行政現場では建築主事を回避する傾向さえある。若い行政マンを教育する制度が必要だ」との指摘がなされた。

会場からは、「確認・検査の民間開放は、制度を作って魂入れずではなかったか」、「発注者が建築事務所を選ぶべきだ」、「民間検査会社に発注される検査の90数パーセントが特定の業者だ」、「業界が検査機関の制裁与奪の権利を持つのがおかしい」、「行政が厳しい指弾をしていない」などとの発言が続いた。

今回の耐震偽装問題の発覚は、建築士の独立や経済的自立がなされていない現状で、我が国の未熟な建築生産システムを改善することなく、安易に確認・検査業務の民間開放を推し進めた結果の、ある意味では当然の帰結ではなかったのか。そして、多額の公的資金が大手銀行に投入され銀行は空前の利益を計上しているのに、被害に遭われた方々に対する国や行政らの被害救済は遅々として進んでいない現状は、あまりに均衡を逸するのではないか。そして、我が国はあまりに「安全軽視の日本」になっているのではないか、そうした思いを抱かせるものであった。
以上、大会1日目の大部分の時間を費やして耐震偽装問題をいろんな角度から検証し、問題の本質に迫るパネルディスカッションが展開されたのではないだろうか。

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