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静岡大会パネルディスカッション 第1部 【3】耐震偽装設計の問題点

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一級建築士 藤島茂夫(東京)

平成17年の11月から耐震偽装設計が社会的に問題となり現在も続いています。本会でも緊急シンポを本年2月(東京)、5月(静岡)と開催し多数の意見が寄せられました。また、日弁連の消費者問題委員会も6月(東京)に開催されました。又、関東ネットでは毎月の相談会に、今回、問題となっているマンションの相談を特別に行っております。
個人的には姉歯氏関係の2物件について、再計算を念頭に現地調査を含め現在検証中です。
制度的には、第一次として法改正もなされましたが、その後の具体的改正には障壁があり、国土交通省も難航しているようです。
上記の状況を鑑み下記のように報告します。

1.構造設計の仕組み
1)建物を設計する場合、意匠設計、構造設計、設備設計に専門分割されて行われています。構造設計は意匠設計の計画に対して、建物の空間を確保するために安全な構法、使用材料(建築基準法第37条)を仮定して計画するものです。一般的構造としては基準法では、主に木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、コンクリートブロック造及び組積造が指定されています。

2)これらの使用材料による構法には、ラーメン構造、壁構造、アーチ、シェル、サスペンション構法等があります。
何れにしても一定規模以上の建物は、これらの構法・材料で設計する場合、構造計算により安全性を定量的(数値)に証明することになっています。法令的には、施行令第36条から80条までが一般仕様基準、施行令第8条から99条までが構造計算の規定となっています。

3)構造計算は、部材配置計画、仮定断面、仮定荷重、応力計算、断面算定、の順に行われます。そして、部材の仮定断面が適正であるか否かの答えがでます。良ければ終了です。そして、設計図も完了となります。

2.構造設計のチェックポイント
1)上記1の手順でできた設計は計算の裏付けによるものものです。故に、先ず、①意匠図と構造図の整合性を照合し、部材断面の大きさ検証をします。次に、②設計図で疑問のところを計算書で力の流れ、分担率等を確認します。③構造計算はコンピューターが主流なので計算のプログラムの種類、と使用者(利用者)名の確認をします。
プログラムには、前記1の設計手順で条件を設定すると、部材配置計画から断面算定までを一貫して計算を行うものがあり、通常は国土交通大臣が認定したものが使用されています。

2)この場合のチェックポイントは打ち出された計算書には、紙面の上に使用者番号が記載されています。又ページが連番になっています。一連の計算が終了すると、最終ページに終了の知らせと、エラーメッセージとワーニング(警告)メッセージがでます。これらは0表示が適正であり、ワーニングメッセージがあれば、その条件について、何らかの説明が別途必要となります。

3)専門的には、特定な柱について、1階から最上階迄について、せん断力の大きさが「応力算定値」と「断面算定値」を比較します。数値が同じならば概ね適正であると判断できます。その他、1階の単位面積当たりの建物重量チェック等も参考になります。

4)今回、「A○○ビル」と「Bグランドステージ○○○」の2件について検証した結果つぎのようになりました。
Aビルは地上0階建で、断面設計時に地震力を約70%低減して断面算定しています。B建物は地上階建で、断面算定時に地震力を約55%低減して断面算定しています。結果として、1階から5階迄の階の柱の鉄筋量が5階建の建物程度しかない状態です。

5)上記の様な高層建物の場合は力を低減する方法で鉄筋量を減らしていますが、中層建物(7階建以下)の場合は、偏心率等を少なくして、計算を行っていることが判明しています。この場合は比較的、鉄筋量だけでは判別が困難です。逆に、中層建物については、設計よりは、施工精度(施工不良)の方が安全性に影響が大きいものと考えられます。
即ち、監理及び中間検査が十分に行われていないものと断定できます。

3.今後の問題点
現在、建築基準法改正について今秋を目途に検討しているようですが、今回、社会問題となったことに対して、法改正の内容がずれているようです。即ち、今回の問題点は『建築士の法律遵守の欠落』にあり、建築の専門性とは直接的な関係ではないはずです。
法改正の中で、罰則規定を重くしたことについては一定の効果は期待できると思いますが、構造専門家に新しく資格制度を導入し、建築基準法令等を十分知らない専門家をつくっても、今回のような問題の再発は防げない。現在でも、建築基準法令を知らない構造専門家が多数いることは、欠陥建築問題に取組んでいる弁護士ならば、調停委員及び鑑定人をはじめ建築士に憤慨していることと思います。
構造の専門家を造る資格制度も結構ですが、その前に法律を遵守する専門家を如何に育てるかが重要です。
現在、論点となっている、一定規模以上の建物は現在の一級建築士ではなく、もっと高度な専門知識のある専門家の新設とかですが、遵法精神とは関係ないような気がします。
又、現状の構造専門家は下請け的存在であり、制度上の規制を主張していますが、現在の自由経済の仕組みからすれば、消費者の同情は得られても、真の理解は得られないと思います。
今回の事件も生活に困るから「違法行為をした」との原因のようですが、これは専門家以前の問題であり、経済社会からの脱落者の弁であり論外です。現在の構造専門家団体の会員の中にも上記のような人が存在しているため、その仲間のために、6月のシンポでは団体代表者の主張が自分達の身分保障を訴えたに過ぎない結果となっていました。欠陥マンション購入の被害者を忘れた自己主張に落胆しました。これでは、建設業界以外の業界及び消費者の観点からずれた、特殊な集団と見られることは確実であり、代表者及び専門家はそのことをよく認識すべきです。
以上がシンポを通して得た感想であり自己批判でもあります。

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