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静岡大会パネルディスカッション 第2部 【1】耐震偽装問題から何を学ぶか

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一級建築士 木津田 秀雄(兵庫)

日本中のマンション住民を不安に陥れた一連の耐震偽装事件は、全国ネット静岡大会以降においては、姉歯元建築士他数名の構造設計者と商業主義に走った民間確認機関によって引き起こされた不幸な事件として処理されようとしている。
しかしながら、耐震強度が著しく不足するマンションやホテルを構造設計者一人で造る事はできない。そこには建築確認申請に名前を出す設計者、建築確認申請を処理する建築基準適合判定資格者、建築主事、施工会社には施工管理技師がいる。当然のことながら、施工監理者もいれば、中間検査を行う建築基準適合判定資格者もいる。
また当然の事ながら、それぞれの建物には建築主がいる。ただし今回の耐震偽装事件での建築主は大きく分けて二種類に分類される。自らが建物を発注して自らが使用する者と、完成後に所有権を移転する事を目的として建物を造る者である。さらに今回はホテル経営にまつわるコンサルタントも加わっている。
一つのマンションやホテルを造るのに、実際に手を動かす職人以外に、数十人の建築士もしくは建築専門家が係わっているが、建築生産現場の上流で発生した過ちを、数多くの専門家の誰もが指摘して正す事ができなかった事実が、今回の事件の最大の特徴かもしれない。
これらの偽装建物に係わった建築の専門家達は、誰一人として「こんな構造はおかしいのではないか」と考えて声を上げなかったのだろうか。いや、上げられなかったと言った方が正しいのかもしれない。そんな中で姉歯元建築士は、いつか自分の行っている不正行為が「ばれる」と思いながら、誰からも指摘されない状況の中で偽装をエスカレートして行ったのではないか。いつか終末が来ると知りながら。
薄々ながらおかしい事を感じながらも、検証してみたり、再確認してみたりすることなく、見過ごしてきた罪はどこにあるのか。ここで、「この建物はおかしい」と言う事が、寝た子を起こす事になりかねない一方で、本当に問題がある事が分かり直面した場合に、人がどのように行動するのかは、既に関係者それぞれの対応を見ればある程度想像がつくところである。結局のところ、今回のようなあまりにも大きな問題は、発見しない方が利口であるという風に感じられる。おかしいと言う方がおかしいという、この業界の空気はどこから来るのだろうか。
事件の発覚以前に何度かあった発見の機会を、単発の問題として曖昧に処理した日本ERI(民間確認機関)と、一方で積極的に問題を公開する事で、寝た子を起こすことになったイーホームズ(民間確認機関)との処分の差、まして行政においては、今回の一連の確認申請の耐震偽装見逃しで公務員が誰一人として処分されなかったという事実を見れば、業界における力関係(悪しきバランス)や、不測の事態に遭遇した際の処理方法など、阿吽の呼吸から外れた業者は、建設業界から退場させられるというのが、残念ながら現在のこの業界の実態でもある。
本当に間違った、悪い事を行ったことで、業界から姿を消すことになるのであれば、それはある意味市場原理が働いているとも言えるが、実際には適正な市場原理ではなく、建築業界という歪んだ市場の中での原理が働いたとも言える結末ではないだろうか。
今後民事事件として、耐震偽装マンションの住民やホテルのオーナーが民間確認機関や行政、設計者、施工者を訴えており、裁判所がどのような判断を下すのか注視してゆきたいと考えている。

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